この日本人を会長に!

2017年10月30日月曜日

私はバルセロナのスペイン広場から地下鉄8号線に乗りアルメダ駅へ向かった。乗車時間は15分ほど、駅を降りるとそこは倉庫街。まったく方向感覚がなく、犬の散歩をしている老夫婦にエスパニョールのスタジアムへの道を尋ねる。久しぶりのスペイン、どうも言葉が出てこない。彼らに言われた通りまっすぐ倉庫街を歩くと交差点にエスパニョールファンパブらしきバーがある。すると私の後ろを歩いていたその老夫婦がここを左に行けばショッピングモールにたどり着き、その右隣だ、と親切に教えてくれた。

 

試合開始二時間前なのに私の他、誰一人サッカーファンの姿がないので心配だったが駅から15分ほどで着いた。真新しい巨大ショッピングモールと青色の光で眩しい新スタジアムが隣接して並んでいる。ここは日本のJリーグクラブが目指している新スタジアムモデルの典型だ。ドイツには存在しないので勉強になる。ドイツではこの手の巨大商業施設がスタジアム横にあることをファンが嫌うし、もしあったとしたら試合前後にモールがビール瓶だらけで荒らされてしまい共存は難しい。

 

さっそくスタジアムを外から撮影しながら周ってみると、すでに多くのベティス・セビーヤファンがたむろしている。若い男二人に写真を撮りたいと伝えると快諾してくれた。やはりラテンの国はノリが良い。どこから来たのか?尋ねられたので「ベルリンから」と伝えると「じゃあ教えてくれ。ドイツ語で女のケツに入れることを何て言うんだ?」まったくくだらない質問だが、「イン デン アーシュ フィッケン」と教えると何度も発音を聞いてくる。誰かドイツ語がわかる人がいたら恥かしいので「またあとで」と別れると「もちろんベティス応援しにきたんだろ」となかば強制するので「もちろん」と答えておいた。

 

次にこちらもノリが良さそうな50歳前後であろうグループの写真を撮る。するとまたしても「あとでアウェー側スタンドで会おう」と言われた。

 

まだ会場まで時間があるので、となりのショッピングモールを散策する。すると遠くから心地よくチャントが聞こえてくるので、音源を見つけにに歩く。シネマコンプレックスの向かいの角にセルベセリア(居酒屋の意)の店内と周辺が緑色で溢れているではないか。小腹がすいているので店内に入りポテトとビールを注文。あまりの混雑に店員たちが混乱しているようだ。ひとりビールを飲んでいると窓際の子供連れのオヤジと目があう。すると私にウウィンクしてきた。まったく調子がいいなあ、スペイン人は、と思いながら店を出ようとするとその巨漢オヤジが話しかけてきて私とハグするとほっぺにキスをしてきた。「おまえもベティスファンだろう」と言うのでそうだと答えるしかない。

 

まったくオヤジの汗っぽいキスは勘弁願いたかったが、悪い気はしない。バカにされるより、温かく受け入れられるほうが良い。

まだチケットを購入せねばならず、早めにチケット売り場に行くとやはりかなり並んでいる。普通ドイツでは現地でアウェーチケットが手に入りづらいのだが、ここでは問題なくゲットできた。アウェー側入り口はそんなに並んでいないが、なかなか前に進まない。ドイツ同様、アウェーファンのセキュリティーチェックは厳重に行われるためだ。数人のベティスファンが、まるで犯罪者のように壁に向けさせられ警察のボディーチェックを受けている。警察による過激派ウルトラスの弾圧は、ここでも厳しそうだ。

 

なんとか試合開始直前にゲートを通過し、急な斜面のスタンドを登る。すると先ほど写真を撮ったおじさんが「おうおまえも来たが。俺のとなりに来い」と誘われたので一緒に観戦する。私の前の若い男はすでに上半身裸で我われ後方の連中にもっと声を出せと要求してくる。比較的簡単な歌詞なので、私も自慢の大声でチャントを歌う。言語は違ってもスペインのチャントと同じ曲がドイツでも歌われているのでリズムはすぐ覚える。歌詞がわからない部分はとなりのおじさんが教えてくれたので前半45分ほぼ完唱した。しかし良い雰囲気である。ベティスのほうがFCセビーヤファンより熱狂的だ、と昔スペイン人から聞いた通り。もう私もすっかりベティスファンになりはじめていた。

ハーフタイムになり、なぜか多くのセキュリティーがアウェー席の一番前を占拠し、なにやらゲストファンに着席よう強制しはじめる。我われは何の問題も起こしていないのに。すると周囲はざわつきはじめ、「40€も高いチケット払ってるんだ。何の文句があるんだ」と怒りの声が聞こえてきた。私も不条理に感じたので「そうやって不必要な弾圧して熱狂的なファンがスタジアムに来れなくなってるんだぞ。あんたらにサッカー文化の何がわかるんだ! 」とアルコールの勢いもあり大声で発するとベティスファンたちがみな私の方を向いて拍手しはじめる。「Ese japones al presidente!」「この日本人を会長に」と喝采が沸き起こる。20秒くらいであろうかこの即興チャントが響き渡り、みな私をまるで英雄かの眼差しで見ていた。なんとも恥かしかった。まったくスペイン人は調子が良すぎると実感したが、あとになってうれしくもなった。

 

 

 

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